仙人力光線

富嶽仙人
01/04/08 15:14 春の雪景色

4月1日


 降雪の翌日。これがまた悩ましい。
 
 富士宮市街やおとなりの芝川町などではちょうど桜が満開である。春・春・春なのだ。
 でも、昨日は山の方には雪が降った。雪・雪・雪なのである。
 
 どちらを取ればよいのだ・・・どちらを・・・苦悶する夜(全くどうでもいいような話だが)
 
 梅雨時は早く夏が来ないかと待ち遠しく、初秋の頃は早く山が紅葉に彩られないかとこれまた待ち遠しく、さらに晩秋には白い季節の到来がこれもまたまた待ち遠しいというように、僕の場合たいていは次の季節がやって来るのを手ぐすね引いて待ちかまえているのであるが、こと「春」に関してだけは「冬」に後ろ髪を引かれる思いで、これからやって来る春を無邪気に歓迎する気持ちになれない。
 
 これはおそらくこういうことだと思う。
 
 夏は、なかなか撮影日和に恵まれない梅雨が早く明けないか、長期の休みが早く来ないかという期待感をもっているので、待ち遠しいのは当たり前。
 
 秋、僕は9月下旬から北アルプスで紅葉の撮影に入る。そしてそこから徐々に標高を下げ、さらに南へと下ってくる紅葉前線を、自分の方から遠征して迎え撃ちながら秋の数ヶ月を過ごす。だから1月になって自分の周りに紅葉前線が到達したころには、すでに十分秋に慣れているのだ。これは冬を迎える場合も全く同じだ。
 
 ところが春は逆である。冬景色にばかり目が向いていて春を迎える気持ちに全くなっていない体勢のところに、4月の声を聞くやいなや、春が足下から一気に萌え上がって、気がついたときには既に完全に春に包囲されてしまっている。僕は突如目の前に現れた「桜前線」の進軍状況に驚愕し、たじろぎ、そして妙な焦燥感を味わうことになる。
 


朝陽のとどく三ッ峠



 
 結局、桜前線から逃避して三ッ峠に出かけることにした。これで今年3回目・・・アホである。
 午前四時半登山口着。山頂で夜明けを迎え得るというのが、この手の撮影行の基本なのだが、彼岸も過ぎた今日この頃、陽が昇る時間は冬に比べて悲しいほどに早くなり、寝ぼすけの私にはとてもとても間に合わない。太陽の光が三ッ峠山頂に届くころようやく三ッ峠山荘の前に到着。
 


春の雪化粧



 
 束の間の冬の風景である。湿気の多い春の雪はしっかりと木々に付着し、降雪量の割にはボリューム感のある雪景色となっていておおいに満足。富士山そっちのけで木々と雪との共同作業による芸術品を撮りまくった。
 
 




 夜明けまでは寒いが日があたると気温はどんどん上昇。この雪景色も長くは持たないだろう。山頂まで上がってノンビリパノラマ展望を楽しんだ後、下山。


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