仙人力光線

富嶽仙人
01/01/27 00:52 三ッ峠雪景色

1月21日

 「雪」 である。ともかく「雪」なのだ。
「雪国」の方にはなんてことのない・・・いや、恨めしいほど降る雪なのだろうが、とにもかくにもこちらでは珍しいのである。
 雪やコンコン、あられやコンコン。
 こうなっちゃうと滅多に雪景色とならない富士山麓をカメラマンが喜んで駆け巡っちゃうことになる。
 
 出かけようと思い立ったのは、三ッ峠。
 朝3時半の起床は既に遅い。もう少し天気の回復が遅いのかと思ったらもう満天の星だった。さぞかし朝焼けが奇麗だろう。三ッ峠まで車で行くのは不可能で、自宅から車で1時間少々かかる登山口からさらに小一時間歩かねばならない。普通なら2時間半あれば到着するのであるが、なにしろ「雪」である。普段よりは時間がかかることが予想される。稜線で朝焼けを見るのは極めて厳しい状況と言わねばなるまい。
 
 ところどころ凍結した道を富士五湖方面へと走る。流石にいつものスピードでは走れず、3割増しくらいの時間を費やす。河口湖大橋も除雪されておらず通行止めである。もっともここはもともと有料道路だから、「営業時間外に除雪して通すような儲からないことはやんないもんね的通行止め」である。コンビニで食料を買って登山口に向かう。
 
 御坂峠の旧道は除雪がされていないものの、すでに何台かの車が通っており、その轍を利用してなんなく走れる。通った車の主は。そのほとんどがカメラマン諸氏のはずだ。そうでなければ、この深い雪の中、夜明け前の時間帯にここを走る理由がない。まったくもって物好きな人種である。
 
 三ッ峠入り口近くで1台の車がスタック中、とうせんぼ状態になっていた。うぬぬ、なんたること、なんたる迷惑。駐車しようとしたのか、Uターンしようとしたのか、路肩に頭から突っ込んで横向きになってウイウイと唸っている。
 
 私の前の「とうせんぼ食らい組」第1号車の男性と私と、とうせんぼ車の主の奥さん(と思う)で押して出そうとするが、こちらの足下も悪く断念。だったらいいや突っ込んでしまえ、帰りはなんとかな〜るさ、ということで、後ろから押して路肩に押し込み、ようやく交通閉鎖解除となった。
 
 私は車はさらに奥まで進めたが、既に車はいっぱいで停める場所がなかなか無い。親切にも止めてあった車を動かしてくれた人が居たこともあって、ようやく駐車スペースを確保。そうでなければスコップで駐車スペースを作りにいかなければならないところであった。
 
 しかし、ここまでで大幅に時間ロス。既に5時半近い。夜明けは無理にしても、なんとか朝の赤さが残っている時間に間に合わせるべく軽量化して道を急ぐか、それとも朝はきっぱりとあきらめて重装備でいくか。ここが思案のしどころ。軽装備と重装備では背負う重量に10kg以上の差がああって、重装備のほうは、大判カメラ一式とと小型カメラ一式、三脚2本ともろもろとでおよそ20kgである。
 
 結局、朝の撮影はあきらめることにして重装備で登ることにした。足には、今シーズンの足慣らしもかねてプラスチックブーツを履く。もちろんこれは三ッ峠では過剰装備なのだが現場では、そのぶんラフに動けるので心強い。
 
 樹林帯で見上げる空が明るくなってきた。木の枝越しに見える奥秩父方面の山々に赤い日があたるのがわかる。出遅れたのをただただ反省するのみだ。
 
 雪道の歩きづらさにに重装備がプラスされて、行程がいつもの倍以上に感じてしまう。ここのところ体調を悪くしてあまり歩いていなかったのも影響しているかもしれない。後ろで高い声がするので女性かと思ったら子供・・・親子連れだが、これがまた早い。道を譲って改めて自分の足の遅さを痛感。最後には60過ぎかと思われる大ベテランの方に抜かれ、もうヘロヘロの状態で山頂に到着した。まったくもって情けないかぎりである。
 
 

 
 朝焼けの姿は望めなかったが久しぶりの山の雪景色に満足である。
 

 
 山頂には、富士山写真家のT氏がすでに撮影は完了したというような雰囲気で立っていた。僕はその横で慌てて、35mmカメラでほぼルーチンワークのような撮影作業をやる。
 
 ところが、ルーチンワークも撮り終わらないうちにトラブル発生。カメラの液晶表示にBCが点灯しっぱなしとなって、うんともすんともいわなくなったのだ(BCマークというのは通常電池が無くなったときに点滅する表示である)。いや「うんともすんとも」というのは不適当。電池を抜き差しして、スイッチをON/OFFすると、ウィッ、ウィッとうなり声はする。しかしファインダーは暗転したまんまだ。電子カメラはこれだから困るのだ。それにしてもやわすぎる。電池は昨晩替えたばかりなのに。これは激安中古で手に入れたカメラ故のトラブルなのか。僕に新製品を買えというのね。
 
 その点大判カメラには電池は必要ないから気楽なものである。すっかり陽も上がってしまったので急ぐ必要もなく、これでノンビリと撮影を撮影を楽しむ。一面の雪景色だが気温はさほど低くないようだ。風のうなり声は時折聞こえるが体を冷やしたり撮影に支障が出るような風ではない。のんびりと、のんびりとである。
 
  

 
 光射し込む雪の森
僕はこういう光景に出くわすとレンズを向けずにはいられない。

 

 
 あちこちで撮って店じまいをしたのは10時をまわっていただろうと思う。登山口からの帰りの足が無いというT氏と一緒に山を下る。登山口までは別の友人の車で来たそうだ。僕にとっては写材の宝庫の雪の山道でも彼にとっては興味のかけらもないようで、富士山写真家との歩調の合わなさを改めて痛感した下り道であった。
 


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