仙人力光線

富嶽仙人
00/10/15 01:47 秋の穂高(1)

 先日ここに書いたように10月3日、乗鞍高原で遊んだあと、沢渡まで車を走らせバスに乗り換えて上高地へ入った。結局6日までこの山域でうろうろしたのだがデジカメを持って行かなかったため、画像の仕上げに時間がかかり「蓮華温泉―白馬」の話を先にしてしまった。話は前後するが御許しを。そんでもってさらに長いので数回に分けます・・・ということで

 それでは、時間を10月3日の夕方に戻して。
 今日は小梨平でテント泊のつもりだ。沢渡で車中泊のほうがテント1泊分の料金と駐車場代金1日分が助かるのだが久しぶりに小梨平でノンビリしたいし、明日の朝もゆっくり撮影を楽しみたい。

 で、肝腎なのが上高地からの登山コース。これがまた困ったことに決めていない。ここ数年、秋の槍沢天狗原に行きたい行きたいと思いつつ行けていないので、とりあえず「そこだけは決まり」のつもりではいる。そこから先が決まらないのだ。いや、正しくいうとそこへの行き方が決まらない。どういうことかというと槍沢のテント場をベースに軽装で天狗原まで往復するのか、それともテント一式背負って槍沢から天狗原経由で稜線を目指すのかだ。自慢ではないが僕は優柔不断なのである。

 大型カメラも持っていこうかと思ったのだが、今回は最近の体力不足を危惧して35
mmカメラEOSだけ。この時期の平日は涸沢を除けば小屋は余裕で泊れるから、予算があれば小屋にしてその分機材に振り向けるのが写真家さんの場合はベターと思う。しかし今回はテントを新調してしまったこともあり小屋泊りの予算がなくなった。

 雲の切れ間から残照の穂高の稜線がときどき顔を覗かせる。明日は良い天気になりそうだ。小梨平のテントは数張。静かな夜である。



朝の明神岳に霧が流れる 上高地河童橋付近より

10月4日

 朝、晴れ。ときおり薄いガスが漂うものの穂高にかかる雲はない。梓川沿いでくっきりと見える穂高にカメラを向ける。東側に雲が多く光の条件が細かく変わるため、光線待ちに結構時間を使ってしまう。



朝の穂高連峰 上高地河童橋付近より


 上高地から見上げる岳沢の紅葉は今一つのように見えたのだが、徳沢付近から見上げる明神、前穂に関しては、ナカマドの赤さが下からもわかるほど見事に色づいている。



徳沢付近から見上げる秋色の穂高


「うーむ、この分だと涸沢も良いだろうな」
「槍沢に行く」という固い決心が、ここに来てグラグラと揺れだした。
「どうしよう・・・」
歩きながらも、めくるめく想いに心は千々に乱れる。

 最終決断を迫られる横尾。ここで道は槍沢方面、涸沢方面の二手に別れるのである。
「涸沢に行くか、それとも槍沢にいくべきか・・・」
新しく立派になった横尾大橋も、おいでおいでと僕を誘う。しかしながら涸沢も去年よりは良いとはいえ、残暑がこんなに長引いたのだから最高の状態では無いはず。
「行ってがっかりするよりは初志貫徹で槍沢へ行って後悔したほうがいいや」
「どうしても涸沢へ行きたくなったらキレットを越えていこう」
と僕は男らしく(どこがだ)槍沢を選択した。

 槍沢ヒュッテに到着。客は少ないようで閑散としている。やはりこの時期は涸沢一極集中なのだ。廊下に飾ってある穂苅氏の作品を鑑賞。穂苅氏はこのヒュッテのオーナーであり、山岳写真家でもある。

 槍沢のテント場は小屋からさらに20分ほど歩かねばならない。そこは日本アルプス登山黎明期、槍沢ヒュッテの前身である「アルプス旅館」が建っていた由緒ある場所。ここは現在の槍沢ヒュッテが立っている場所よりは開けており展望も良いのだが、槍や穂高、あるいは常念という名峰が見えないのでちょっと寂しい。しかし壁になっている横尾尾根や東鎌尾根の木々の色づきがそれかわって目を楽しませてくれる。まだ全体として黄緑色で紅葉には至っていない。例年ならもうこのへんがもう紅葉のピークを迎えているはずだから、紅葉の進行は一週間遅れという感じだ。


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