仙人力光線

富嶽仙人
00/07/15 00:52 八ケ岳

7月9日
 
 雨続きだったこともあって、暫く山に登っていなかった。
 歳をとると(ってまだたいした歳ではないのだが)、
 少しの間歩かなかっただけで、体力的にはとても不安になる。

 本格的な夏山シーズンを迎え、
 果たして今、自分が山歩きに耐えられる体なのかどうか
 確認しておく必要があるのだ。

 久々の好天、どこに行こうかとっても悩ましい。
 いつもはこの時期、櫛形山や霧ヶ峰に出かけることが多い。
 もちろん櫛形はアヤメ、霧ヶ峰はニッコウキスゲがお目当ての花の山旅である。

 しかし、今回はもう少し長く歩きたいという気持ちがあった。
 北岳にしようか、八ケ岳にしようか・・・
 北岳ではキタダケ草がまだ咲いているかもしれない。
 八ケ岳硫黄岳から横岳にかけての稜線では
 コマクサがピークを迎えつつあるに違いない。

 で、結局僕は赤岳にした。
 花のコースではなく、清里・美し森山から真教寺尾根を辿ったのだ。
 下りは、県界尾根。
 山頂近くでは鎖場と梯子の連続するなかなか骨のあるコースである。





 出発点は美の森山の駐車場。
 でも歩く距離を少しでも短くするのだったら、
 Kitz Medowの駐車場の方がよい。
 ここからリフトを使えば賽の河原までの一時間強の歩行が省略できるし、
 県界尾根からの下りの距離も短くなる。
 しかし、朝の5時ではまだ駐車場の門は閉じられたままで入れない。

 道路のドン詰り、林道手前のゲート付近に何台か車が停めてあった。
 ここから県界尾根を登って、真教寺尾根を下るというのもよい案かもしれない。
 下山時、疲れてしまったら賽の河原からリフトで下りてしまえる。

 でも、僕は敢えてロングコースをとった。
 
 牛首山までは、去年も出かけていて勝手知ったる道といえる。
 途中の羽衣池・・池というより水たまりのようなものだが、
 ワタスゲが奇麗だったので、逆光側に回り込んで写真を撮ってみた。
 この手の被写体は逆光に映えるのだ。





 賽の河原では、これから登る赤岳と、
 少し霞んだ富士山を眺めながらしばしの休憩。


 ここから先はぐっと自然林らしくなる。
 去年はもうこの辺りから上は霧だった。
 そのせいで原生林が
 とても幻想的かつ重厚に見えたのだが、
 晴天の今日はなんだか
 あっけらかんとして
 軽薄な風景に見えてしまう。

 それでも古い樹が倒れ、
 若い樹がそれを乗り越えるようにして
 育っている様子に、
 過去から未来へ繋がる自然の営みを
 感じる。
 こんな森を沢山残しておきたい・・・
 と思うのだ。

 牛首山、そしてその先の扇山という辺りは、
 比較的勾配が緩やかなところで、
 のんびりゆったり、登山道脇に咲く
   ズダヤクジュやゴゼンタチバナ、
     そしてイワカガミなどの花を愛でながら行く。

 いつのまにか、樹が低くなり、少なくなり、
 花もミヤマキンバイ、ミヤマダイコンソウ、ハクサンイチゲが
 中心になってくる。


 いよいよ頂上へむけての急登が始る。
 いままで快調だった足がピタリと止まってしまうような急勾配だ。

 ふうっと立ち止まると
 目の前にクロユリの群落。
 (写真右)
 それをいいことに
 ザックを下ろして一休み。
 クロユリのほか、ミヤマキスミレ、
 ハクサンイチゲ、ミヤマシオガマ、
 イワベンケイ、ツガザクラなども
 マクロレンズで撮っておいた。

 本格的な岩稜コースになり、
 鎖場が連続するようになると
 もう頂上は近い。
 両手も使ってよじ登り
 一気に高度を上げていく。


 キレットからの縦走路と合流。
 ここではチョウノスケソウ(写真右)が
 一面に咲いており
 山頂はもう目と鼻の先なのだが、
 ザックを下ろして撮影に興じる。

 山頂到着は11時を過ぎており、
 5時半出発だから
 5時間半かかったことになる。
 後半、足が止まってしまったのが
 情けないが、
 それは花の写真を撮るためであったと
 言い訳しておこう。

 とにもかくにも頂上まで来たのだ、えらい、えらい。

 下りは頂上山荘の脇を抜け県界尾根を下っていく。
 ここも急勾配。梯子と鎖場の連続である。

 大天狗を過ぎるともう急な勾配はなく普通の山道となる。

 フィナーレの長い舗装路歩きが余計だが、
 よい山でよい一日を過ごせたことに満足した。


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