仙人力光線

富嶽仙人
00/06/11 00:56 冬を探して

僕の富士山の撮影は、
冬がもともと僕が撮影対象としていた山の写真や森や花の写真の
シーズンオフにあたっていて、
その時期に近場で手軽に写真が撮れる対象として手をつけはじめたもので、
それが撮影対象として意外と面白いのと、
「富士山の写真」が広く一般に好まれることがわかってきたことで、
だらだらと今まで続いている。


そうは言っても実際は冬は自然写真のオフシーズンではない。
雪のフィールドは美しいし、冬の山の姿は厳しくも格別なものだ。
つらい季節を耐える動植物の姿もすばらしい被写体になる。

けれども、ずっと単独で歩いていた僕は、「危険」を感じて、
これまであまり冬のフィールドには近づかないようにしていた。

 冬山と呼べるような登山は、もう10年以上も前正月の八ケ岳赤岳以来出かけていない。
それも、このときはただ連れて行ってもらったというだけで
自分の能力で登ったとは言いがたい。

当時は、「これから冬山もがんがんいくぞ」と思ったものだが、
その後は忙しさにかまけて山とは疎遠になってしまい、
最近では富士山周辺の低山に登るだけになってしまった。

 ネットをはじめて、山の友人も増え冬山の話を聞くうちに、
雪のフィールドへの気持ちが再燃してきた。
しかし技術も体力も気力もないおじさんだから
突然でかけるのは危険きまわりない。

 そんなことで、今年はまず雪に慣れるところからと思いながら
北八ヶ岳山麓彷徨だなどと洒落こんで出かけてみた。
白駒池ならメジャーなところだし、小屋も営業しているから容易いであろうと、
八千穂高原から歩く計画である。

スキー場の脇から信濃道自然歩道が伸びているが、夏に歩いた経験もないから様子がわからず、
スキー客の中に場違いな格好で入り込むのも抵抗があったので、
そこは見送って車通行止めのゲート前まで行って車を止めた。
小屋の車はゲートを開けてさらに上までいくのだから、ここは歩行には問題のない道である。

ここをずっと行って小屋の荷揚げルート
―頼めばスノーモービルで送迎もしてくれるのである―をたどれば問題ないはずであったのだ。



雪深く難行苦行・・・天候も悪化してきた。
それでも冬の森は美しい


そう、確かにその道を通ればまるで問題なかったのである。
しかし横着心が芽生え、白駒池手前から別ルートへ、
先行する二組のスノシューの踏み跡が僕を誘ったのだ。

 しか〜し、まともに歩けたのはわずかな距離で、あとはズボズボと悪戦苦闘。
積雪で下の様子は判らないが、地形的に見ると、どうやら丸木橋もあるようで、
その隙間にときおりどすんと落ち、足抜けない状態に陥ってしまうこと数度。
情けないこと限りなしである。



朝は結構言い日差しで、
雪の積もった白樺林が明るく輝いている、
むふふ状態であったのだが・・・。


 四つんばいになって歩いているところに、向こうからはスノーシューの二人組。
ああ彼らが足跡の主なのねと思ったものの、
あまりに自分がみっともない格好故、話し掛ける気にもならず
挨拶だけしてやり過した。

 昔の「輪かんじき」にとって代わって、
最近ではスノーシューなるしゃれたものがあることは知ってはいたが、
今までは必要ないものと思っていた。
でもやっぱスノーシューはここでは必需品だったのだ。

 さらに悪戦苦闘は続く、白駒池はまだ遠い・・・ところが忽然として踏み跡消失・・
ありゃ・・連中ここでUターンしたんじゃん。
なんと先ほどの二人組は池まで到達せずここで引き返していたのだ。
なんだよスノーシュー履いているくせに軟弱者ぉ〜。

僕はなおも前進を続けたが、時間制限もありやはり途中で断念。
素直に荷揚げルートを行けばよかったと大反省であった。



すっかり挫折して下ってきたときには、もう横殴りの雪であった。
それでも写真家はめげないで吹きつける雪が写真にならないかを考えるのだ。
長野県 八千穂高原 2000.2.27


 このズボズボ体験をしてから突発的スノーシュー欲しい病が発症。
今シーズンはきっと使うことはないに違いないということがわかっていながら、
通販のサイトをポチっとクリックしてしまったのであった。

そこでは売り切れ表示が出ていたので気長に待つつもりでいたのだが、
なんと一週間経たないうちにUASから航空便で到着。
国内の通販よりも早いではないか。

案の定、それからスノーシューが必要になるようなフィールドへ出かけることはなく、
このスノーシューは部屋の中でまさしく無用の長物と化している。

 まあこれはとっかかりということで、これからはぼちぼちと冬の山旅も楽しんでみたいと思っている。

 どうなることやら。


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