「山旅倶楽部」で広がるアウトドアライフ
No.93 2002.6.7
北海道 道南 長万部

長万部の原子心母

長万部の原子心母

すいません、最初にお断りしておきます
今回の写真の意図するところは、ごくごく個人的なものです


僕は高校二年生の時に、それまで自分の中にあった価値観を一度全て捨て去り、自分自身を再構築しました。いわゆる一般常識とか、親や教師など、大人から詰め込まれた価値観も一旦放り出し、改めて1つ1つ、物事に対して、自分はどう感じているのか、その理由はどこから来るものなのか..

結果として、やはり自分の好きなことをつらぬくべきだという、ごくごく平凡な結論を出したのですが、これをいざ実行するとなると、かなり大変でした。親はいわゆる有名大学を出て、一流企業でサラリーマンとして働くことを望みます。それに反して僕は音楽や映像という、いわゆるアートの世界(=当時はヤクザな世界)で生きていくと決めたわけですから、当然、毎日が親との喧嘩になってしまいます。家出先まで確保していた僕ですが、最後は親が折れてくれました


このような状態ですから、最初の受験は、とりあえず自宅から逃避したいだけの精神状態ですので、勝負は最初から捨てたまま、九州福岡にある某国立大学を受けました。その時に携行した本が高野悦子の「二十歳の原点」です。自分にとってはバイブルのような存在でした

サウンドエンジニアを目指していた自分にとって、ピンクフロイドは最も憧れていたグループでした。その中でも大好きなアルバムが「原子心母」です。ジャケットにはグループ名も、タイトル名も一切記述されていません。草原に1頭の牛がいて、こちらをジッと見つめています。ジャケットデザインはヒプノシスという、イギリスのデザイン事務所によるものです。この牛はイラストのように見えて、実は写真でした。ヒプノシスは写真を用いてファンタジーを作り上げる、世界でも最高レベルのデザイン能力を持っていました

そのピンクフロイドが2回目の日本公演をおこなうと聞いて、絶対に見に行くぞ..と、決意。受験先の福岡から、大阪に住む従兄に電話をかけ、大阪フェスティバルホールでのコンサートチケットを購入してもらえるよう、お願いをしました。結果、チケットは入手でき、僕は、コンサート前日に京都に出かけ、高野悦子が入り浸っていたジャズ喫茶「シアンクレール」で、名物ママさんが作ってくれた、ホットコーラを飲みながらマイルスデイビスのビッチズブルーを聞いていました

ピンクフロイドのフェスティバルホールでのコンサートは1972年の3月8日、9日の2日間行われました。僕はこのどちらかに出かけたのですが、日にちの記憶が定かではありません。しかし演奏内容はしっかりと覚えています。ステージに立った彼らは、いきなり「月の裏側」という、現在レコーディング中のナンバーを演奏しはじめました。普通コンサートといえば、レコードで聞いた曲を中心に構成されるものですが、彼らは違い、演奏は全て新曲だけでコンサートは進行しました。素晴らしい演奏で十分満足はしているのですが、やはり、僕を含めて、客の欲求不満は若干募ります。コンサートも終盤になった、その時、客席の一人が、大阪弁なまりの英語で「アトムハートマザー」と叫びました。するとギターのデビッドギルモアが、ニコリと微笑み「OK」というや、いきなり原子心母の演奏が始まりました。本来ならばフルオーケストラをバックに演奏される原子心母を、4人のメンバーで見事にプレーしています。これが一流のミュージシャンなのか..と..興奮しまくった僕です。何故ならば、僕が初めて見た外タレのコンサートは、後楽園のグランドファンクレイルロードだったのですが、この時の演奏は、実はテープレコーダーにあらかじめ録音されたもので、それに合わせて口パクしているだけのものだったからです

その後、僕はプロのサウンドエンジニアになり、当時大阪フェスティバルホールの音響チーフであった堀江正氏と、日本PA技術者協議会(現日本舞台音響家協会)の全国理事という立場でお会いできました。初志貫徹です


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