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秋葉街道は中央構造線に沿い、静岡は天竜、龍山、水窪から長野県高遠の杖突峠を経て諏方に至る街道だ。途中静岡から国道の途切れる崖、青崩峠で長野県に入る。ただしこの峠は崩落のため通行はできず、兵越峠を迂回することになるのだが、この道がすごい。車幅ぎりぎりの細い道を急角度で落ちるように下っていく。対向車とすれ違うことなど考えられないほどに細い道だ。もしも長野、遠山郷側からの登坂だとすると、僕の車はオーバーヒートしてしまうに違いない。それほどにきつい峠だった。
南信濃村に着くと美しい渓流、遠山川が迎えてくれる
川傍に建つ、脱サラだという福福亭のご主人の打つ手打蕎麦を食べ、日本のチロルと呼ばれる下栗に向かう。上町からぐんぐんと山を登っていくと、光岳、茶臼岳が見え始め、上河内岳、聖岳の望める個所まで来ると、そこが下栗の里だった。チロルという言葉でイメージしていた風景とはまるで違い、とても懐かしい日本の農村風景が展開していた。しかしその畑はスキーの直滑降コースを彷彿する斜面なのだ。そしてその先に南アルプスの雄大な姿がある。この急斜面の畑を指して日本のチロルと呼んだのだろう。それにしても素晴らしい風景だ。海抜1000mのこの地から眺める南アルプスは飽きることがない。急斜面ゆえに土地は必ずや崩れるはずだが、随所に工夫がなされている。また手入れもされている。厳しい自然の中で暮らす人々の勤勉さと、知恵には脱帽してしまう。また12月には国の重要無形民俗文化財「霜月祭」がおこなわれる。一生に一度だけでもよい。是非とも見たい祭りである。
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