「山旅倶楽部」で広がるアウトドアライフ
No.196 2003.7.10
秋田県 鳥海山

涼を飲む 氷結生酒

涼を飲む 氷結生酒
[Exif位置情報 あり]

秋田側の鳥海山の周りには3箇所の道の駅があるが、どの道の駅にも温泉施設が完備されている。特に道の駅「にしめ」の温泉「にしめ湯っ娘ランド」は24時間営業で助かる。また道の駅「にしめ」と「東由利」には、独立した大型スーパーもあり、キャンパーにとってはとても便利だ。鳥海山を囲む、この3つの道の駅の便利さは全国の道の駅の中でもトップクラスといってよいだろう

道の駅「象潟 ねむの丘」の物産館を見物していたら、ショーケースに、冷凍された「氷結生酒」を見つけた。実に涼しげな出で立ちで美味そうだ。さっそく、係りの女性に氷結生酒の飲み方を聞いてみた。「飲むときに冷凍庫から出しておけば、徐々に解け始めるので、それをグラスに注げば、みぞれ状の生酒を楽しめます」と彼女は言った。みぞれ状の酒か、つまり酒のカキ氷というわけだ。これは試さない手はない..さっそく1本購入。夕飯も終え、後は寝るだけだったので、この「氷結生酒」を車内のベッドの上で味わってみた。こりゃゃ旨い。酒の度数は普通の日本酒に比べると高く、ウイスキーのオンザロックを飲むような濃さが良い。香りもきちんとあるし、爽やかさもある。素性のかなり良い酒であることは間違い無い。そういえば、この日本酒は、どこのメーカーだろう。瓶の周りが氷結しているので、メーカー名などは見づらかったので確認していなかったのだ。氷で濡れたラベルを読んでみると、なんと醸造元は僕の大好きな「飛良泉本舗」ではないか。アルコール度数は17度以上18度未満と書かれている。あらためて「飛良泉本舗」の住所を確認すると仁賀保町だった。仁賀保町は象潟の隣にある海岸沿いの町だ。「飛良泉本舗」って鳥海山の麓にあったのか。普段、飛良泉の純米酒を自宅傍の酒屋で購入している僕は、秋田の酒であることは理解していたが、町名までは記憶していなかった。こりゃ明日は「飛良泉本舗」に行くっきゃないな

翌朝、さっそく仁賀保を訪れてみた。町は道路も狭く、いかにも海辺の町の佇まいだ。「飛良泉本舗」は、この細い通りに昔ながらの風情を残してあった。店内に入ると、一人の女性が出てきて板の間に座った。お客は靴のまま店内を歩くが、店の方は一段上がった、板の間にいるのだ。テレビや映画で見かける、江戸時代の商店そのものの世界。僕は女性に「飛良泉本舗」はどうして海辺に出来たのですかと尋ねた。普通は鳥海山の湧水のある山側に作ると思ったからだ。すると女性は、仁賀保は鳥海山の地下水が湧き出る土地であることを告げた。そうか、愛媛の西条と同じなのか。西条は石鎚山の水が湧き出る町だ。良質な水が得られ、漁港にも近ければ運搬にも便利だ。それにしても、ここ「飛良泉本舗」から海岸までは目と鼻の先ほどに近い。秋田の田園風景の中にあるものと、思い込んでいたので、意外性に驚いた。女性に昨日飲んだ「氷結生酒」の感想を述べ、土産用に数本注文をした。すると「これを使用してください」と棒を差し出された。氷結した瓶の中に、この棒を差し込み、上からつつくと、みぞれをグラスに注ぎやすいのだそうだ

2日間滞在した鳥海山だが、一度も頂上を望めなかった。無念だが仕方ない。次の目的地、湯沢に行かなくてはならない。その日の宿泊地を東由利の道の駅に決め、夕暮れの鳥海山竜ヶ原湿原を後にして東由利に向かった。地図を見る限り難なく到着するはずだった。しかし最短ルートで選んだ道は、細く険しかった。家など殆ど無く、真っ暗闇での走行は怖かった。しかも途中、工事個所も多く、迂回させられる道はさらに細い。くねくねと曲がる未舗装の道をひたすら走るのだが、いかんせん低速。道の駅「東由利」に到着したのは既に夜8時を過ぎていた。まずはレストランに営業の最終時間を尋ねた。8時半がラストオーダーなのだが、「お待ちしているので、先に温泉にどうぞ」とありがたい返事をいただいた。道の駅「東由利」の敷地はかなり広く、温泉、レストラン、そしてスーパーや文具店、ファストフード店などを有するショッピングセンターがある。風呂も広く気持ちよかった。この道の駅の名物は「フランス鴨」だ。レストラン「やしお」ではフランス鴨料理を手頃な価格で食べられる。フランス鴨ラーメンも気になったが、僕は柳川風に調理した、やしお定食1000円とフランス鴨の刺身500円を注文した。何よりも嬉しかったのは、あの「氷結生酒」が置いてあったことだ。この後は寝るだけなので、もちろん注文する。出てきた氷結生酒には、冷えたグラスと伴に「飛良泉本舗」でいただいた棒がちゃんと添えられていた。嬉しい配慮だ。フランス鴨の柳川風も刺身も、どれも旨い。殆ど9時近くに入店したラストの客の僕に、嫌な顔1つせずに、心地よい接客をしてくれる。これ本当に道の駅のレストラン??。気持ちの良い時間を楽しめた

ところで、この旨いフランス鴨は道の駅の西、台山地区で飼育されている。通常スーパーなどで市販されている合鴨は、北京ダック系と交配したイギリス産チェリバリー種だが、ここ東由利で飼育されているフランス鴨はフォアグラ用の鴨でもあるバルバリー種で、ヒナをフランスから輸入、飼育している。この第1世代の成長した鴨が産んだ卵をかえし育てた第2世代の肉を加工したものが、東由利のフランス鴨肉だ。バルバリー種はチェリバリー種と比較して体長は大きいのだが、肉質は柔らかく、臭みも無く、そして繊細な味がする。鳥海山に来たら一度立ち寄ると良いだろうと、述べたいところだが、この道の駅「東由利」、鳥海山からは、結構距離があるのでご注意願いたい


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