「山旅倶楽部」で広がるアウトドアライフ
No.195 2003.7.7
秋田県 鳥海山

低温抽出のコーヒー

低温抽出のコーヒー
[Exif位置情報 あり]

鳥海山には名瀑が多い。その1つ、奈曽の白滝を訪れた。階段を登りきると金峰神社があった。高さ26m、幅11mの滝とコバルトブルーの滝壷を眺める。夏の生い茂った木々の緑と湿り気が厳かな雰囲気を醸しだしている

奈曽の白滝から元滝に向かう途中、一軒のコーヒー店があった。ちょっと休憩するのもよいだろうと、立ち寄ってみることにした。店名は「珈琲屋」、ストレートな名前だ。店内に入ると、いかにもコーヒー専門店という雰囲気。そしてカウンターの中には、職人気質バリバリのオーラを発しているご主人と、ほんわか優しい人柄の女性がいた。テーブル席についた僕はメニューをまず見た。メニューの先頭は「ブレンド珈琲 \500」。下段のメニューとの間にアンダーラインが入っている。その下に続くのは、大概キリマンジャロ、モカ、コロンビア、マンデリン、ブルーマウンテンなどが普通のパターンだが、この店のメニューには「ばんじろう \600」、「マタリブレンド \600」、「キューバ \600」、「ペルー \600」、「おてまえコーヒー \600」、そして「おかわりコーヒー200円引」と書かれている。んんんんん?????こんなコーヒー名なんて聞いたことないぞ。マタリはモカマタリのことかもしれないな。しかし「ばんじろう」「おてまえコーヒー」って何なのだ。なんで「おてまえ」だけコーヒーなのだ

メニューの内容が気になったものの、コーヒーではなく、わざわざ珈琲と書かれている「ブレンド珈琲」を注文した。カウンターでの作業をそれとなく見ていると、アラジンの魔法のランプのような銅製のコーヒーポット(きっとカリタの製品だろう)に金属の棒を入れたまま、じっとしている。何をしているのだろうか。コーヒー豆に湯を注ぎ始めるまでに、随分と時間が経ったように感じた。出てきたコーヒーを一口飲んでみた。通常の温かいコーヒーを予想していたので、ふいにパンチを食らったように戸惑った。「ぬるい..だけど芳醇な香りとまろやかなコクがある」。今まで体験したことのないコーヒーだった。お茶でいうところの玉露や抹茶の「ぬるさ」だろうか

ご主人に感想を述べ「おかわりコーヒー」を注文した

2度目のコーヒーなので、今度は落ち着いて飲むことが出来た。そしてご主人、熊谷正さんから、この店のコーヒーの秘密を教えていただいた。それは彼が独自に編みだした「低温抽出法」によるコーヒーの入れ方にあった。そうか、コーヒーポットに入れた金属棒は湯温をチェックするために使用していたに違いない。ぬるいけど旨い。不思議な体験だった。はるか昔、僕はラジオのとある番組で「コーヒーに入れる湯は、沸騰したものは風味を壊すので85〜90度くらいが良い」ということを聞き、その後、沸騰させた湯が少し下がる程度で入れていた。しかし「珈琲屋」のコーヒーは、85度よりもずっと低めの温度に感じた。こんなに温度が低くても旨いコーヒーが出来るということは、豆の選別、焙煎方法など、かなりの試行錯誤を経て、辿り着いた技法なのだろう。ここ「珈琲屋」は鳥海山登山の方達も、よく立ち寄ることなど..お聞きしていたら、他のお客さんも、どんどん入店し始めたので、これ以上は営業に差し支えるなと、聞きたかった「ばんじろう」や「おてもとコーヒー」については残念だが、聞かずじまいで店を後にした

しかし、やはり気にはなるものだ。自宅から電話で宿題の件を尋ねてみた

「ばんじろう」は、お客さんから教えてもらった、福岡県の「ばんじろう」さんが書いた低温抽出法の本、この中に出てくるブレンドと同じ比率、ブルマン6割、コロンビア2割 モカ2割でブレンドしたコーヒーなのだそうだ。ただし低温抽出法は熊谷正さんが編みだしたオリジナルの方法で入れている。そして「おてまえコーヒー」は、30gの豆をまさに抹茶をたてるように、茶筅を使い、入れたコーヒーだと丁寧に教えていただいた。最後にご主人は「珈琲屋」は現在、栗山池公園にある「くりりんハウス」に移転したと述べられた。大きな建物で、まだ未使用の部屋も結構あるのだが、是非見てくださいと付け加えられた。電話の声は力強く、そしてコーヒーへの情熱がヒシヒシと伝わってくる。次回、鳥海山に行く機会があれば真っ先に訪ねてみよう


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