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三瓶山をあとにして山口県に向かうべく、大田市から海岸沿いの9号線に出る。次の目的地は鳴き砂で有名な仁摩町の琴ヶ浜だ。前回この9号線を訪れた時は、北九州から下関に入り、日本海沿いに鳥取は東郷湖まで走った。その時は九州の取材がメインだっため、琴ヶ浜は素通りせざるを得なかったゆえ、今回はリベンジなのだ。しかし琴ヶ浜に到着すると、あいにく、もの凄い風が海岸を吹き荒れ、とても鳴き砂を味わうどころではなく、あえなく撤退、一路山口県を目指すことにした。9号線をひたすら走り、島根県をぬけるには、かなりの時間を要するが、途中の海岸線は美しく、9号線と並行して走る山陰線が、さらに旅の風情をかきたててくれる。日も傾きかけた道の駅「ゆうひパーク浜田」で一旦休憩し、益田市に辿り着いたのは夜も7時頃だった。この先を進むと夕食にはありつけそうもないと判断、益田漁港から市内をウロウロと探索していたら、国道沿いに真新しい和食店を見つけた。暖簾をくぐり店内に入ると客は僕一人、招かれるようにカウンターに座る。明るく、品の良い、お洒落な店内だ。どうやらご夫婦で経営されているらしい。本日のお薦めであるカレイの煮付けを待つあいだ、ご主人の話を伺っていると、趣味は渓流釣りのようで、島根から山口にかけての川の状況をかなり細かく教えていただいた。天然のアマゴやイワナがまだまだ沢山いるらしく、その釣果を語る時のご主人の頬は緩みっぱなしだ。料理も旨い。せっかく西日本に来たのだからと、普段、関東では食べられない「蓮根饅頭」を無性に食べたくなり、メニューには無いことを知りながらも注文してみたところ、「20分時間をください」と快く受けてくださった。出てきた蓮根饅頭は予想通りのウマウマ。ここのご主人の腕前は確かだ。旅をしてて思うのは、西日本と関東、東北の食文化の違いだ。例えば居酒屋に入り、メニューを見るとその違いを知ることができるだろう。東京から青森までは殆ど似通っていて、基本的には煮物とマグロやイカの刺身や焼き魚が定番で、味は濃い口の醤油ベース。つまるところ芋の煮っ転がしや寄せ鍋的な単調な料理が中心となる。しかし西日本は京料理や懐石料理に通じる、素材を活かす繊細な味と見た目の美しさが見事。食に関しては関東以北は西日本には到底かなわないと思う。やはり平家以来の貴族文化が継承されているからなのだろうか
翌日は天候も晴れ、風も穏やか、あっという間に山口県は須佐町に辿り着いた。ここの海岸沿いにホルンフェルスを見ることができる場所がある。ところでホルンフェルスという単語を覚えたのは中学の社会科で、長年、実物を一度この目で見てみたいと思っていたが、今日、やっと実現したというわけだ。ホルンフェルスは接触変成石といい、バームクーヘンのような層が見所。写真はそのホルンフェルス大断崖が剥き出しとなった畳岩だ。黒い部分は頁岩(けつがん)が、白い部分は砂岩がホルンフェルス化したものである。周辺にはスイセンが楚々と咲き、この畳岩まで降りて、カニと戯れることも出来る
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