「山旅倶楽部」で広がるアウトドアライフ
No.124 2002.8.18
秋田県 羽後町

これぞ和製ラップ 西馬音内盆踊り

これぞ和製ラップ 西馬音内盆踊り
[Exif位置情報 あり]

西馬音内(にしもない)盆踊りは世界一の盆踊りなんですよ

車のラジオから聞こえてくるゲストの語りを聞くともなく聞いていると、8月16〜18日の3日間、秋田県羽後町でおこなわれる盆踊りは、世界一の規模なのだそうだ。何が世界一なのかはよくわからなかったが、盆踊り自体日本にしかないのだから、おそらく日本一の盆踊りといいたかったのだろう


湯沢は不思議な町だ。国道沿いに飲み屋が延々と続いている。どうしてこんなに飲み屋が多いのだろうか。夕食を食べに駅近くの鮨屋に入り、そのことを店主に質問したら、「湯沢は酒どころの町だからでしょう」といわれた。いあわせた客たちも頷く。そういえば清酒爛漫は湯沢の酒であることを思い出した。湯沢には小さな造り酒屋は多いのだそうだ。そんな話をしていると店主が隣町で珍しい盆踊りをやっているから見に行くとよいという。今日は最終日で夜11時頃まではやっているらしい。隣のお客さんが、「夜10時を過ぎると面白くなるぞ」という。どうやらその盆踊り、音楽は生演奏で唄い手がいるらしく、しかも10時を過ぎると歌詞の内容がかなり艶っぽくなるというのだ。見に行かない手はない。詳しい場所を聞くと、それが羽後町の西馬音内盆踊りだった。この時、数年前にラジオで聞いた「世界一の盆踊り」と、店主たちが是非見に行きなさいと薦める盆踊りが同じ物であることを知った


これぞ和製ラップ 西馬音内盆踊り

羽後町は、のどかな「あきたこまち」の田園風景が続く。中学校の校庭が臨時の駐車場、そこに車を停め、本町通りの西馬音内盆踊り会場に向かう。1本の細い商店街の両脇に松明がたかれ、その道に沿って踊りが始まっている。普通、盆踊りというと、広場の真中にやぐらを組み、太鼓をたたき、その周りを踊るのが一般的だが、西馬音内の盆踊りは違う。通りの始まりと終わりの間を浴衣や端縫い衣裳を身にまとった女性が黒頭巾や編み笠を深くかぶり、踊りながら道を練り歩く。男性もいるが、主役はあくまで女性だ。遠くから囃子と唄い手の声が聞こえてくる。それはまさにラップといってよいほどに、リズムと言葉が一体化し、体が自然に疼いてくるほどのパワー感溢れるものだ。秋田弁??、あるいは羽後町の訛りなのだろうか、僕には殆ど日本語として聞こえてこない。なんとか単語レベルで歌詞の内容を翻訳してみると、確かにすごくエロティックな話だ。まさに夜這いのことを唄っている。通りをさらに進むと、片側にやぐらが見えてくる。そのやぐらで演奏はおこなわれているのだが人数がすごい。大太鼓、小太鼓、笛、三味線、鼓、鉦という編成で、三味だけでも5,6名、総勢20名近くにものぼり、まさにビッグバンドだ。そのバンドの演奏にあわせて唄い手が「地口」、「甚句」を唄い続ける。演奏は盆踊りの終了時間まで何時間も絶えることなく続けられる。このエネルギーは圧倒されるほどに凄いものがある


ひこさ頭巾 その覆面姿の下にある素顔

今から700年前の正応年間、源信という修行僧によって始められた西馬音内盆踊りの特長は踊り子たちの衣装にある。浴衣姿の女性たちは「ひこさ頭巾」と呼ばれる覆面をつけ、素顔は見せず、「音頭」と「がんけ」の2種類の踊りを舞う。特に「がんけ」は月光の夜を飛ぶ雁の姿を表す「雁形」に由来し、エネルギー溢れる演奏とは全く対照的に、手の先まで流れるような優雅な舞を踊り、決して見飽きることはない。「ひこさ頭巾」をつけた女性たちの素顔はどのようなものなのか..答えは写真を見れば一目瞭然。少女たちは、このエロティックな歌詞の内容をどこまで理解して踊っているのだろうか


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