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居醒の清水から地蔵川に沿って醒井(さめがい)の宿場を歩きはじめると、この町に車は全く似合わないことが、すぐにわかるだろう。ノスタルチックな町並みは、今でも宿場町の雰囲気を醸しだしている。この宿場町の特長といえば、やはり地蔵川の作り出す、川の風景の美しさにつきる。静岡県三島の柿田川のように、バイカモが育つ水は、飲めるほどにきれいだ。そこには天然記念物のハリヨが棲んでいる。ハリヨと出会いたければ、地蔵川を訪れることをお薦めする
醒井の風景を東京で例えると、三鷹市、武蔵野市にまたがる井の頭公園から湧き出た水は、公園の終わりで神田川になるが、その神田川沿いの風景が一番近いと思う。しかし違いは歴然だ。神田川は、その始まりから既にドブ川だ。バイカモなど望むべくもない。玉川上水も生活とは分離されてしまっているし、また国分寺のお鷹の道(野川)は、今でもまだきれいな水を保持しているけど、醒井の人達ほどには、生活の中に川が溶け込んでいるようには思えない。都の管理下の公園として保護された地域だからだ
醒井は、川と人が共存している、日本でも残り少ない貴重な場所だ。郡上八幡ほどにはメジャーでないことも、僕にとっては嬉しい。この宿場が妻籠や馬籠のように観光客で溢れてしまったら、この川の美しさはあっという間に消滅してしまうように思うのだ。サクラの咲く4月、あるいはバイカモの花咲く7月に訪れるとよいだろう
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